◇はじめに
AIDSボランティア訪米報告》にまとめた通りであり、『バディ』に関する今回の訪米の基盤を成すものであり、阪神・淡路大震災に対する支援活動・募金活動の試行錯誤の中で、その重要性を改めて認識させられた内容でもある。
しかし、ボランティアとコミュニティに関連して、一つ大きな疑問が残った。コミュニティの中での相互扶助の構図は、あくまでもコミュニティに視点をおかなければバランスがとれない。では、一人一人の人間に視点を移したとき、人はどう人をささえ、人はそのささえをどう受け容れることができるのだろうか?
つまり、あるサイズのコミュニティを想定すれば、ギブ・アンド・テイクの主体やその時期は大きな問題ではなくなり、確かにコミュニティ・レベルで常に収支が合うことになる。しかし、コミュニティの合理性だけで人間は行動できるものだろうか? ギブ・アンド・テイクの主体はあくまでも個人なのだから、個人レベルで精神的なバランスをとるためのメカニズムが『ギブ』と『テイク』の双方に何か存在するのではないだろうか?
そんなことを考えていたとき、ニューヨークで『バディ』というエイズのボランティアをされている日本人の女性がいるという話を聞いた。『バディ』は、相棒とか親友という意味の言葉で、HIV 感染者/AIDS 患者との安定した人間関係を基盤として精神的なサポートを行うマン・ツー・マンのボランティアだ。形態としては最もシンプルだが、人と人との関係として、きわめて奥の深いボランティアではないだろうか。
何かキッカケがつかめるかもしれない。彼女とどうしても話がしたくて、再びニューヨークを訪れた。ニューヨークへ向かう飛行機の中、機内放送のチャンネル6、イヤホーンから聞こえてきたのは期せずしてジョン・レノンの『イマジン』だった。偶然にしては奇遇過ぎないか?
SIDE A は、ニューヨークで『バディ』のボランティアをされている松本さんとのインタビューを記録したものであり、SIDE B は、松本さんがサポートしているジョニーの家を訪れたときの記録だ。松本さんとジョニーの話を聞くうちに、『バディ』が、ささえ・ささえられるという単純な構図では理解できないことが次第に明らかになっていった....。
《SIDE A》
◇松本みどりさん(33)、ニューヨークでマスコミ関係に勤務する傍ら、積極的にボランティア活動に参加。
◇1995年6月4日(午後)、ブルックリン、ニューヨーク
《SIDE B》
◇松本みどりさん(33)
◇ジョニー(27)、松本さんのクライアント。中国系アメリカ人。免疫機能の低下によりサイトメガロウイルスに感染、視力が極度に低下している。
◇ジャズミン(18)、ジョニーの姪。ごく自然にジョニーをささえている。
◇1995年6月11日(午後)、◇コニーアイランド、ニューヨーク
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