◇1:1のAIDSボランティア ❒ バディってなに?
◇今日のお話は、どんな形になるかは分かりませんが、できれば活字にして紹介したいと思ってるんです。
バディってなに?って話、まとまったものは本当にないですから。
◆みどり:ええ、でも定義付けって難しいですよね。私もなに?って聞かれると困っちゃう。
◇バディって「こういうものです」というよりも、読んでいるうちに「あ、こういうことなの」っていうのが捉えられたらいいと思うんです。
◆みどり:バディの中身は、クライアント(※1)との関係によってそれぞれ違ってくると思うんです。
でも、基本的には、ま、「友人」なんですよね。
例えばAPICHA(※2)のような支援団体がありますが、団体として、あるいは仕事としてやる分にはやっぱり限界があるし、越えちゃいけない一線っていうのも当然あるわけです。ソーシャル・ワーカーにしたってそうです。その越えられない、越えたところの部分をバディがサポートする、っていう感じだと思うんです。
※1 この場合、バディの相手、つまりサポートの対象であるHIV感染者/AIDS患者のこと。
※2 Asian & Pacific Islander Coalition on HIV/AIDS, Inc.。アジア・太平洋諸島系に特化したHIV/AIDS支援団体。アピチャあるいはアパチャと発音されている。
◇関係としては個人が強いですか? 組織というよりは....。
◆みどり:ええ、個人の関係だと思います。
もちろん、個人(ボランティア)と組織があって、クライアントがいて組織があって、そしてバディ・プログラムがあって....。組織は仲介役的なところはあると思います。
◇現実には、例えば週に何回とか?
◆みどり:何も決められてないんですけど、確か週に3時間以上はやるなって最初のときに言われました。
◇やるな?
◆みどり:ええ、要するに無理があってはいけないっていうことなんです。
◇それは、例えば松本さん側に無理があっちゃいけないということですか?
◆みどり:はい。
◇3時間ね。それは意外だったな。
◆みどり:越えないようにって。でも、越えてますけど....。
◇越えちゃいますよね?、結局。
◆みどり:越えますね。
◇長期不在するときなんかは、代わりに誰かが行くということですか?
◆みどり:そういう場合もありますし、クライアントの状態によっては APICHA のクライアント担当の人がそのまま面倒をみるということもあります。でも、もちろんバディのような密接な関係というのはなかなか難しいですよね。
バディのリクアイアメント(APICHAの要請)は1ヶ月に6時間から8時間。それが最低限です。
もう一つのリクアイアメントは、1ヶ月に1回、バディのサポート・ミーティングというのがあるんです。それが、だいたい1時間くらい。あとは、1ヶ月に1回、状況をレポートするんですけれども、(サンプルを見せながら)それがこういう感じで....。
◇随分長いものですね。この方(クライアント)とはいつ頃から?
◆みどり:ええと、去年の3月。
まあ、入院してたりすると書くこと多くなりますし、状況が変わったりなんかすると....。最近ちょっと多いですね。先月22時間、4月も22時間、3月23時間。
ただ、私の場合には、彼、住んでるところが遠いんで、家を出たときからの時間で計算するんですよね。要するに、ボランティアの時間はそういった移動の時間も含めたものっていうことで....。そういうのが含まれるんで、1回往復すると結構な時間になっちゃうんです。
最近は、向こうの家に行くと(歓待されて)フォアグラ状態にされるんで、食べてる時間も長いんですよ<笑い>。
◇電話も20回ということですか?
◆みどり:ほとんど1日おきくらいにはしてますね。
あと、一応日誌みたいのをつけてるんです。真面目に書くときもありますし、電車の中で書いたりすることもありますけど....。これをベースにして毎月のレポートを書いてます。
◇普通の話をするんですか?
◆みどり:そうですね、だいたい「どう?」っていうことから入って、普通の時には「うん別に」って。
ジョニーはね、あんまり自分から話すタイプじゃないんです。だから、ただ「どう?」って聞くと、「I'm OK.」って、こういう答が返ってくるんですよ。それで、状況を知ってれば、「頭痛はどう?」とか「咳はまだ出てる?」とか、そういうところから始めると少しずつ話してくれるんですけれども....。
まあ、そういうからだの状態のチェックをして、落ち込んでたりなんかする時には「なんで?」とか、家族のこととかも結構話したりします。もちろん普通の、「私は何をしてたか」とか、仕事の話なんかもしますし、出張のあとだったら、「どこ行ってたの?」とか「どういう会社に行ったの?」とか....。
彼が最近一番最後に言うのは「Don't work too hard.」って。「あんまり働き過ぎちゃダメだよ」って、いつも言われるんです。
◇逆に気をつかわれてたりして....。
◆みどり:私のやり方は、私もオープンにしちゃうんですよ。自分のことも、それから会社の愚痴もたまに言います。例えば、何か悔しいことがあったりすると、そういった話もしますし、どこまで面白いのか分からないですけど、でも私も丸裸になることによって向こうも安心感が出るというか、同じ関係になれる。あくまでも私が上にいて、向こうが下とか、そういう関係じゃないんだっていう....。
◇バディの関係ができると、それは1対1なんですか?
クライアントを2人持つとか....?
◆みどり:そういう人もいます。でも、それは、クライアントのからだの状態にもよりますし、バディのスケジュールにもよりますよね。
私は、APICHA の中でバディを始めた一番最初の人間なんです。最初3人で始まったんですよね。で、一人はわりと若い女の子だったんですけど、彼女にはちょっと荷が重すぎたみたいで、すぐやめちゃったんです。
もう一人の人は2人クライアント持ってました。彼女は看護婦さんだったんです。もともとプロフェッショナルな人なんですけど、クライアントの一人がわりと状態も安定してて、まだそんなにからだにも症状が出てない....。しかもマンハッタンのずっと上の方に住んでたんで、電話でのやり取りだけっていうのは聞きました。だから二人いてもできたのかもしれませんね。
◇クライアントから見た場合、バディは一人なんですか?
◆みどり:それはよく分からないですね。でも、今まではバディの数が不足してて....。ただ、こういうケースはあります。
APICHA では感染者/患者さんたちのミーティングが月に2回あるんですけど、その中でもお友だちできますよね。で、こうこうこういう人がいてどうのこうのっていう話も出てくるんですけど、たまたま私のクライアントが入院しているときにそのうちの一人がお見舞いに来てたんです。で、「みどりでしょ? ジョニーのバディだよね。誰々知ってる?」って言われて、私はたまたま知ってたんで「ええ、知ってる」って言ったら、「彼、ぼくのバディなんだ」って....。そこで初めてお互いのバディの関係がオープンになって、今はお互いにお互いのこと話しますし、「彼はどうしてる?」とか電話がかかってきたり、向こうも私の話とかしてるみたいですし....。
で、その友だちの方のバディがしばらくインドに帰ってた時期があったんです。そのときに、その子のからだの状態がよくなくなって、すごく落ち込んでるって話をジョニーから、私のクライアントから聞いたんです。で、「APICHAには電話したの?」ってジョニーに聞いたらなんか電話してないみたいだし、「私と話したいようだったら電話くれるように言って」って電話番号あげて....。そしたら「自殺したい」って電話がかかってきたんです。こりゃ困ったなと思って、本当は APICHA 通した方がいいのかなとも思ったんですけど、でもいいや、これはもう個人的な、友人としての関係でやっちゃおって。で、「とにかく明日行くから、それまで待って」って言って、翌日訪ねて....。
そういうことはしてますね。個人的な判断のもとに友だちとしてたまに電話で話したりとか、それはもう、私は個人ベースだと思います。
でも、そういう自然な流れ以外のときには、コンフィデンシャリティ、要するに秘守の義務が非常に大事ですから、クライアントのことは話しません。
◇松本さんのクライアントの方も患者さん方のミーティングには出てらっしゃるんですか?
◆みどり:ええ、出てます。
しばらく出てなかったんですけど、最近はわりと出てますね。
◇ミーティングではどういうことが?
◆みどり:それこそ自分の気持ちを話したり、症状のことを話したり、あるいは薬のことについても話してるみたいです。こういう薬は効いてるとか、ぼくは、あるいは私は西洋医学には頼らないんだ、漢方でいくんだっていう人もいるみたいです。あと例えば、こういった症状が出たときにはこんな気持ちだった、だけどこういうふうにしてなんとか克服したとか....。
◇特に議題を設定してという堅苦しいミーティングではなくて....。
◆みどり:私、出席したことないんです。
それは、あくまでもクライアント同士のミーティングなんです。一人だけコーディネータがつくんですけど、その人はソーシャル・ワーカーで、プロなんです。
◇それにはバディは参加しない?
◆みどり:参加しません。それは、彼らが彼らの間だけで話すことなんで....。
逆に、バディのサポート・ミーティングにはクライアントは参加しません。
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