1995年6月12日月曜日

Buddy in New York - お互いに気にかけている人

◇やさしさの構図/QoF(Quality of Friendship) ❒ お互いに気にかけている人

◇はじめに
◇1:1のAIDSボランティア
 ❒ バディってなに?
 ❒ 社会の枠組みの隙間
 ❒ 笑顔が見たい
 ❒ 想像力の問題
 ❒ ギブ・アンド・テイク
 ❒ 助けられられる?
 ❒ プライオリティ
 ❒ Do you like to have some help?
◇やさしさの構図/QoF(Quality of Friendship)
 ❒ あなたのそばには?
 ❒ 関係を断たれないこと
 ❒ お互いに気にかけている人
 ❒ ささえてくれるひとのために
◇おわりに(追記)
K:バディと友情との違いは何か?ってみどりさんに聞いたんです。
 でも、彼女と話したあと、私たち日本人は本当の友情なんて理解してないんじゃないか?ってことに気がついたんです。だとすると、ばかげた質問だったよね。

Johnny:バディは、HIV や AIDS を持っている人と友だちになるボランティアにオーガナイゼーションが与えた名前だけど、僕はみどりのことをバディだと考えたことはないよ。彼女は僕の親友なんだ。

K:だから、多分日本では、何がバディかを学ぶ前に、何が友情かとか、何が愛情かとかを真面目に考え始めた方がよさそうだね。
 おそらくそれが答なんだろうな....。

Jasmine:彼らがバディって言うのは、ここにあなたのためのボランティアがいますよって言うよりも、バディって言ったほうが親しい感じがするし、いい言葉だからだと思うわ。
 ボランティアと言うと仰々しい感じがするし、バディは感じのいいピッタリの言葉だわ。

K:問題は、どうやって説明するかなんだ、多分。どうやったら説明できるのかわからないな。

Johnny:お互いに気にかけている人? 助けが必要な人を助ける人? それだけだよ。

K:ああ、とてもシンプルだね。
 1月に日本で大きな地震があったのは知ってる?

Johnny:もちろん。

K:その時は、確かに助け合うことができたんです。何故なら、誰もが神戸で何が起こっているか、テレビで見て知ってたから。ところが、他のことになると、何が起こっているのかよく理解できない。だから、お互いに助け合うために立ち上がることができないんだ、大抵は....。

Johnny:何かおそれてるからなのかな? 偏見とか何か....。

みどり:PWAs(People with AIDS)に対して?

K:多分 HIV 特有のことではないと思う。
 日本ではあらゆることが均一だから、違うものは何でも除外しようとしがちなんだ。

みどり:日本人は何か大切なものをなくしちゃったんじゃないかしら。昔は助け合って生きていたはずなのよ。

K:私もそう思う。

みどり:歴史を遡ればね。

Johnny:何でもそうだけど、HIV で困っているような人を助けるのはとても大切なことなんだ。ケアと理解を示して....。

みどり:どうして他人を助けられるんだと思う?

Johnny:え?

K:<笑い>。

Johnny:どうして他人を助けられるんだと思うかって?
 ジャズミン、答えられる?<笑い>

みどり:誰かを助けたいと思うとき、じゃあ、どうして助けたいと思うの?

Johnny:だって、助けの必要な人を見たとき、助けずにはいられないだろう? 目の見えない人が道を渡ろうとしていたら....。

Jasmine:道を渡るのお手伝いしましょうか?とか言っちゃうわよね。

Johnny:目の見えない人の中には、そういうの嫌いな人もいるんだ。自力でやりたいと思ってる人が....。
 僕は誰か来て助けてくれないかな?と思うんだけど(※1)、自分で頼むのは苦手なんだ。
 ※1 ジョニーはサイトメガロウイルス感染によりほとんど視力を失っている。

みどり:聞かれるのは構わないんでしょ?

Johnny:ああ、僕はね。でも、それは一人一人違うんだと思うよ。ものによってはあれは嫌いだとかこれは嫌いだとか、それは人によると思うよ。
 でも、誰かが本当に僕を助けようとしてくれるなら、僕はいつだって嬉しいよ。僕が困っているのを見て、誰かが助けを申し出てくれると、僕はとっても嬉しくなるんだ。

K:ジョニーがどうしてほしいか分かるから助けられるんだろうね。
 うーん、難しいな。

みどり:単純だから難しいのよ。
 ジャズミンはどうして他人を助けたいと思うの?

タバコある? Johnny

大丈夫? K

大丈夫だよ<笑い>。 Johnny

Jasmine:学校でもやってるし、コミュニティ・サービスでもやってるわ。

みどり:どうして助けたい思うの?

Jasmine:どうして?
 どうしてか?って言うと、助けを必要としている人が大勢いることは分かってるし、他にいい方法もないし、何もしないなんてできないわよ。誰かが助けなきゃ。
 助けるのは、その人たちの喜ぶ顔が見たいからよ。悲しそうな顔なんて見たくないもの。私だって悲しくなるし。だから助けるのよ。
 私は、そのコミュニティ・サービスで年に2回食べ物の配給を手伝ってるんだけど、英語をしゃべれない人でも嬉しそうな顔を見ることができるし、みんな笑顔で「ありがとう」って言ってるわ。彼らが幸せそうなのを見ていると、心の中がとてもゆたかになるの。

Johnny:ジャズミンはエイズ・ウォーク(※1)にも出てるし、僕の自慢の姪だよ。とても自慢なんだ。
 ※1 HIV/AIDS をサポートする世界最大の NGO である GMHC(Gay Men's Health Crisis, New York)が主催するファンド・レイジングのイベント。参加者(ボランティア)がニューヨーク市内を練り歩き、人数や距離に応じて企業や個人が寄付をする。寄付金は数億円に達する。

Jasmine:みんな時間を無駄に使ってるでしょ? 私は何か役に立ちたいわ。妹なんか一日中家にいてテレビ見てるだけ....。

Johnny:有意義な時間にしないとね。

メンソールのタバコだけど? K

僕、メンソール好きなんだよ。 Johnny

K:いいんですか、みどりさん? ジョニー、タバコ吸ってますよ。

みどり:それは、彼が決めることです<笑い>。
 彼、タバコはとめられてないんです。

Johnny:そうそう<笑い>。

みどり:稲田先生(※1)もOKって。あら、先生寝てるわ。
 ※1 稲田先生は、ニューヨークにあるセント・ルークス・ルーズベルト病院の内科・リウマチ学研究室の部長でありコロンビア大学の主任研究員。80年代初期からエイズの研究に関わっている。また、イナダ・ラング・エイズ研究財団を設立し、同病院を中心に日本人医師・医療関係者のための HIV/AIDS 医療研修プログラムを推進している。
 稲田先生は、ファンド・レイジングのためにキャノン・ボールに出走を予定していたが、この日の早朝、スタート地点のデトロイトへ向かう途中で車が故障。これを引き取りに行き、肉体的な疲労と精神的な落胆の中、我々のインタビューにご同行下さった。
 ちなみに、先生はヘビースモーカーでカンピー愛好家。

K:先生、疲れてるんだよ。

Johnny:だから静かだったんだね。

みどり:先生、随分疲れてるのね。

Johnny:もっと多くの人たちがこの病気のことを理解するようになれば、こわがるどころか、カジュアル・コンタクトではうつらないんだということが分かるはずだよ。セクシャル・コンタクトや静脈内に注射する麻薬使用以外ではうつらないんだということが....。
 僕は、いまでも感染していることを知らない人に話すのは不安だよ。それを聞いた人がどう反応するか分からないから....。もっと多くの人たちが理解してくれたら、随分居心地がいいんだろうけどな。それが、僕があまり外出しない理由なんだ。それは、この近所でも起こり得ることだし....。でも、エイズなんて全然気にしないっていう人もいて、時には勇気付けられることもあるよ。理解さえすれば、彼らも差別しないんだろうけどね。

ポケット灰皿だよ。 K

ニューヨークのスモーカーの必需品だね(※1)<笑い>。 Johnny

 ※1 ニューヨークでは禁煙運動が盛んで、ビル内や一定規模以上のレストランではタバコを吸うことができない。しかし、その反動で、戸外での喫煙は日常的な風景であり、路上には吸殻が目立つ。

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