1995年6月12日月曜日

Buddy in New York - 関係を断たれないこと

◇やさしさの構図/QoF(Quality of Friendship) ❒ 関係を断たれないこと

◇はじめに
◇1:1のAIDSボランティア
 ❒ バディってなに?
 ❒ 社会の枠組みの隙間
 ❒ 笑顔が見たい
 ❒ 想像力の問題
 ❒ ギブ・アンド・テイク
 ❒ 助けられられる?
 ❒ プライオリティ
 ❒ Do you like to have some help?
◇やさしさの構図/QoF(Quality of Friendship)
 ❒ あなたのそばには?
 ❒ 関係を断たれないこと
 ❒ お互いに気にかけている人
 ❒ ささえてくれるひとのために
◇おわりに(追記)
F:みどりさんに会う前は、どういうサポートを受けてたの?

Johnny:大したサポートは受けてなかった。基本的には姉さんと家族。友だちにもほとんど話してないんだ。
 仲のいい友だちが一人いて、他に職場の友だち二人には話したんだけど....。彼らは理解してくれたよ。親友のニックは頼りになるし、信頼できるけど、それ以外はただの友だちだよ。

K:今どういうコミュニティに属していると思う? 合衆国とか、アジア人とか....。

Johnny:地域的な意味で?

みどり:心の問題として。言い換えれば....。

Johnny:アジアかな?
 父さんも義理の母さんも中国人だし....。でも、両親は英語が話せないし、僕は中国語が話せないんだ。

みどり:私は日本人で、中国語は話せないし、中国人でもない....それでも私といて心がやすまる?

Johnny:もちろんさ。
 君は「日本人」じゃなくて僕の友だちなんだ。もちろん、日本人だということは知ってるけどね。

みどり:他のアメリカ人の友だちとはどこか違う?

Johnny:ああ。みどりは実際初めてのアジア人の友だちなんだ。

みどり:じゃ、ニックとはどこが違うの?
 彼もアジア人じゃないの?

Johnny:彼は高校時代からの知り合いだし....彼は女性じゃない<笑い>。

みどり:それは大きな違いね。
 トイレに行くときが大変なのよ。ニックなら大丈夫だけど....。

Johnny:どんなことでも、話したくなったときに、君に電話できて、安らぎを感じることができると分かっていることはいいことだね。

みどり:ジョニーも私もアジア人だから、いろんな点でよく分かるところがあると思うの。
 例えば、直接ドクターとかに質問するのが恥ずかしかったり....。私も同じなんだけど、ジョニーのためだったら自分をプッシュして質問することができる。不思議なのよね、自分の....。

Johnny:自分のことになるとできない、だろ?
 もう一つ大切なことは、支援してくれる、支持してくれる友だちがいること。そして、この HIV/AIDS という病気のためにその関係を断たれないこと。それは、僕にとってとても重要なことなんだ。

K:日本人は、大抵のことはお金で解決できると思ってるから、お金が一番大切だと思ってる人が多いんです。僕はそうは思わないけど....。多分、こういうお互いに助け合って生きている状況そのものがとても大切なんだと思うな....。
 ううん、難しくて質問ができないよ。

みどり:<笑い>
 彼は、何質問しようかと一所懸命考えてるところよ。

K:あんまりベーシックな質問ばかりで....。

みどり:随分哲学的な質問ばかりするから、私、よく分からなくて。

Johnny:僕に答えられるといいけどね....。

K:日本で質問リストは用意してきたんだけど、ほとんど役に立たないよ。

Johnny:どうして?

K:日本で考えていたときとはまるで様子が違うから....。

みどり:ジャズミン、あなたはずっとジョニーのそばにいて、私と彼が友だちになってから、何か変化があったと思う?

Jasmine:彼に?

みどり:そう。

Jasmine:そうね、以前だったら自分の中に閉じ込もって知らない振りをしていたようなことをいろいろ話すようになったと思うわ。最近は随分オープンになったと思う。随分変わったと思うわ。

Johnny:気の許せる人には随分オープンになったよ。気の許せない人にはまだシャイで無口だけどね。
 気楽にならなきゃいけないんだけど、居心地が悪いとなかなかオープンになれないんだ。

みどり:ヘレンは好きでしょ?

Johnny:ああ、とてもいい人だよ。
 時計のことで恥ずかしかったんだけど(※1)、彼女がどんどん話しかけてくるもんだから、それで親しくなって....。
 ※1 ジョニーは目が不自由なため、時刻を音声で知らせる腕時計をプレゼントされた。静かなミーティングの最中、突然コケコッコーという目覚ましが鳴り始めたが、ジョニーはもらったばかりで止め方が分からず、大慌て。

みどり:彼女は正直だし、オープンだと思わない?
 彼女は....。

K:昨日 APICHA で会った年配のボランティアの中国人女性のことでしょ?

Johnny:ちょっと知り合いになりたかっただけなんだけどなあ。

みどり:彼女はあなたに話させるものね。
 私、もっと話させたいわ。

Johnny:彼女とは随分話したよ!

みどり:本当よく話したわよね。
 最後になんて言ってたか憶えてる?
 「随分話せて楽しかったわ」だって<笑い>。

Johnny:ヘレンはとてもいい人だよ。僕の電話番号教えて、彼女も教えてくれて、話したくなったらいつでも電話しなさいって。
 彼女と話してるととても楽しいよ。
 気にかけてくれる人たち、必要なものを整えてくれる人たちがいてくれて本当にうれしいと思うよ。いつも気にかけてくれたり、助けになってくれる人たちが大勢いてくれるから本当に心強い....。
 少しずつだけど、彼らが僕の心を和らげてくれていることが分かってきたんだ。

みどり:ジョニーのサポート・グループの年配の人たちはとても素敵で、私たちが部屋に入っていくとすぐに立ち上がって握手して、昨日なんかジョニーのまわりに一度に4つも5つも手があって....。

Johnny:そうだったね。

みどり:みんなあなたを助けようとしてるのよ。私はもう必要ないんじゃないかと思ったわ。
 私たち(APICHA)は、いまフレンドシップの輪を広げようとしてるんです。

K:難しいな。簡単っていえば簡単なんだけど。

みどり:Kさんは、友だちでいるとか、あなたのために側にいるとか、とてもシンプルに聞こえるけど、すごく難しいって言ってるのよ。

Johnny:ああ、簡単じゃないさ。

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