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For Beloved Friends,1997年1月16・17日の両日、代休を利用して重油除去ボランティア活動に参加してきた。
海岸線の様子はテレビ報道の通りだったが、ナホトカ号の船首部は、映像で見るよりも遥かに巨大で、海岸からすぐ近くに錆色の船体を横たえていた。大切にしていたものを不注意で壊されてしまったような感じだろうか。事故とはいえ、重油で真っ黒になった浜を目の前にして、どうやって元に戻せるのか、しばし立ちつくしてしまった。
さて、完全防備に身を固め、16日の7時半頃ボランティア本部で登録を済ませると越前松島水族館に行ってほしいとの要請があった。水族館?と思ったのだが、現地へ行って説明を聞いてようやく理解できた。つまり、水族館のイルカのプールは、海から直接海水を汲み入れているため、表面に油が浮き、イルカに重大な影響を与えているというわけだ。もちろん、少し沖の海底から取水しているから重油の塊が流入するわけではなく、1~数ミリ大の小さなオイルボールが絶え間なく入ってきて、表面で虹色の油膜を作るのだ(海の中も同じ状態だということ)。生後7ヶ月の子イルカがいるため、移動には慎重だったようだが、17・18日に須磨水族館などへの移送が決定され、それまでの間、少しでも快適な環境をイルカに提供しようというわけだ。
作業は、2mほどの木の棒に90cmほどの横木をT字型に固定し、これに約80cm四方の油吸着シートを洗濯挟みで取り付けたものを使って、常時約10人ほどが24時間体制でひたすら表面の油を取り続けるというもの(交替要員を含めると1日20人以上が参加)。私は、16日は8時~20時、17日は8時~12時半参加したが、まるで禅の修行のようにひたすらプールの周囲を歩き続けるのは結構こたえた(19日現在もあちこちが筋肉痛)。
ただ、間近にイルカたちがいて、時々は彼らと遊ぶことができたから、海岸でドロドロになって重油と格闘した人達に比べれば慰めは多かっただろう(日頃の行いにはやはり気を付けなければ!)。ちょっと遠くの油を取るためには、棒をぐんと延ばさなくてはならないのだが、そんなとき、ひょっとしてイルカがジャンプしてこの棒を飛び越えるのでは?という幻想にとらわれたのだが、残念ながらドラマは起きなかった。
今回の災害は、神戸のときとは違って、最後は「環境」がキーワードではないかと思っていた。そんな私も、しかも数年前に子供とショーを見た越前松島水族館にイルカがいることを知っていた私も、このような作業の必要性には行ってみるまで気が付かなかった。やっぱり、想像力の欠如だろう。「環境」と言いつつ、やはり海の幸(食べ物)や景観でしかイメージできない。海という調和のとれた環境に全面的に依存している生き物がいる。もちろんかわいいイルカだけではなく、主に海の幸であるウニやアワビもその一員。そしてもう少し輪を広げれば、我々もその一員なわけだが、普段豊かな生活に首まで浸かっている私たちには、確かにすべてが自分たちのいいようにコントロールできているように見えるから、繊細な調和とかバランスということに鈍感になっているのも無理はないのかもしれない。
神戸の時も思ったのだが、私たちが何か大切なことに気づくためにはあまりにも大きな犠牲を必要とする。それなのに、印象は日常の中で徐々に薄らいでいく。それは、確かに現実なのだが、何とかしなければね...
今回、イルカたちの存在は、少なくとも私に、再び大切なことを思い出させてくれた。
様々の形で今回のボランティア活動を支援してくれた友人と家族に感謝する。
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